業界研究 大学生がIT企業を分析する際にチェックすべき点を教えます

企業に入る際の指標として、現状の財務基盤がどうなっているのかチェックすることは非常に重要です。 作ってみたいサービスがあっても、企業に開発出来るだけの環境や潤沢な資金がなければそのようなことは できないからです。   ですが、ただ単に会社説明会に行くだけで本来知りたい企業の実態を把握することは可能でしょうか? どの企業でも良い学生に入社してもらうために多少の誇張をしたり、見栄をはることは日常茶飯事です。 入社してみたら、すぐにでも出ていきたいとんでもない企業だった!ということは十分ありえます。 
本日はそのような事態を防ぐために、事前にチェックしておくとよい資料をご紹介します。   今回ご紹介させていただくのは、「有価証券報告書」という資料です。   EDINETという、経済産業省が運営する会社から閲覧することができます。   どういった資料かと言いますと、金融商品取引法という法律で定められている、 年度毎に作成する企業内容の報告資料のことです。必ず決められたフォーマットで 書かなければならず、虚偽記載をした場合には最悪上場廃止になる可能性があります。   学生向けと言うよりは投資家向けの資料のため、会社説明会では説明されないような その企業の懸念点や今後の課題等がしっかりと書かれています。 そのため、説明会だけでは見えてこないような、開発環境の実情や、今後の業務の継続性 などを調べる際に非常に役に立つ資料となっています。 
しかし、1つの企業毎の報告書の量が膨大で、すべてを見るのは難しいため、「主要な経営指標等の推移」「業績等の概要」「対処すべき課題」「事業等のリスク」と 書かれた項目のみを見ることから始めてみましょう。   上場会社にしか提出義務がないため閲覧できる企業は限られますが、使って見る価値はあると思います。 今回はせっかくなので、最近話題となっているソーシャルメディア・ソーシャルゲーム界隈の 「グリー」「ディー・エヌ・エー」「サイバーエージェント」「ミクシィ」を見ていきましょう。   まずは、今年ディー・エヌ・エーを抜いて、ソーシャルゲーム市場で売上No.1になったグリー。

売上や純利益の伸びも好調で、利益率も非常に高く推移しています。 ただし、「事業等のリスク」の部分には、「当社グループのサービスでは、サイト内で利用可能な アバター等の各種アイテムとの交換等を目的として、『コイン』を発行しております。一部の悪質な ユーザーがアイテム等を不正な方法で入手して利用及び譲渡するといった行為やリアル・マネー・トレード が発覚しており、業界全体としての不正防止のための取り組みが課題となっております(中略)」等々 の課題もかかれており、リスクがなく、必ず安全とは言えないことがわかるかと思います。   続きましてディー・エヌ・エー。

グリーほどではないですが、安定した純利益と利益率を誇っています。     サイバーエージェントはどうでしょうか?
売上自体は安定して増加していますが、年度によっては、利益率が 減少しているのが気になります。原因としては、2009年の有価証券報告書の「業績等の概要」に、「前連結会計年度 の投資育成事業における営業利益貢献1,019百万円がなくなった(中略)」と原因が記載されています。   さて、特に気になるのがミクシィです。

日本初のソーシャルメディアとして、一時は圧倒的な 成長と売上規模を誇っていましたが、最近では他社と比べると成長の度合いは今ひとつとなっております。 2012年度の有価証券報告書の「事業等の概要」の部分では、「①ソーシャルネット事業 (中略) 収益面では、課金売上は順調に拡大したものの、広告売上において、震災の影響による出稿抑制や、スマートフォン への利用シフトによるモバイル(フィーチャーフォン)広告の出稿が減少し、(中略)支出面では、課金収益の 増加に伴い決済手数料が増加したとともに、事業拡大に伴う人員の増加により人件費が増加し、セグメント利益は3,861百万円 (前連結会計年度比19.9%減)となりました」との記載もあり、収益構造が若干悪化しているのが伺えます。     企業の見方一つにしても様々な視点があるかと思います。上場企業の中で入社を検討している会社がある際には、特に気になった年度の有価証券報告書を見てみてはいかがでしょうか?