明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科准教授 宮下芳明さんインタビュー

今回は明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 准教授 宮下芳明さんにインタビューさせて頂いた。

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1.明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科を実際新設されていかがですか?

先端メディアサイエンス学科(Frontier Media Science、以下FMS学科)は今年度開設された新しい学科ですが、多くの受験生にその存在を知ってもらうことができ、結果としてモチベーションの高い学生達が集まってくれたように思います。入学した学生達に聞いたところ、Twitterやニコニコ学会を通じた広報にも効果があったようで、それだけでも新しい時代の到来を感じているところです。

この学科は、IT産業界においてイノベーションを起こせる人材を創出したいという思いから設立に到りました。新学部である総合数理学部の設置、新キャンパスである中野キャンパスと合わせてトータルにデザインすることができましたので、学生にとっても最高の環境になったと自負しております。

2.先端メディアサイエンス学科では、まずプロトタイプをつくってみることからはじめるとありましたが、プロトタイプをつくることの意味を宮下先生はどのようにお考えですか?

おっしゃるとおり、FMS学科のカリキュラムでは、横断的な知識を幅広く身につけさせるとともに、システム/インタフェース/コンテンツをデザインできる能力、そしてプロトタイピング能力を養います。

自分が何かを発想するのと同時に実装ができることは非常に大きな意味を持つと考えています。発想したものを話す(プレゼンテーション)だけでなく、実際に見せ、動かし、体験してもらうことで、より的確にその良さを伝達できるようになります。また、そもそも本当にイノベイティブなアイデアは実装と検証のサイクルの先に生まれ得るものだと思っています。

プロトタイピングを行うために重要な能力が、プログラミング能力です。FMS学科ではクォーター制をとっていて、特に1年前期の前半での教育に工夫をしています。それは「エンタテインメントプログラミング演習」という科目なのですが、プログラミングの基礎を教えていく前に、「プログラミングによって新しいものを生み出すことの楽しさを体験する」ことを念頭に置いた演習を行います。言語はHSP(Hot Soup Processor)というプログラミング言語を用いています。

プログラミングの入門書でよくみられる、C言語を用いて最初にHello Worldプログラムを「写す」作業は、初学者にとってはそれでも行数が多いと感じられ、タイプミスやセミコロン抜けによるエラー出力が最初のプログラミング体験になりがちです。たとえうまく動いたとしても、すでにソースコードの中に表示されているHello Worldという文字列があらためて出力されたところで、今の時代では「世界よこんにちは」という気分になりにくいものです。

HSPではウィンドウ生成が0行でできるなど、少ない行数で多様な結果を得られる工夫がなされています。たとえば「CDトレイのイジェクト」が1行で行えるのですが、それを実行させたときにはコンピュータルーム中で歓声が上がりました。いわば「実世界よこんにちは」からスタートするようなもので、コンピュータの力を手にすれば自分たちの社会や生活にもはたらきかけることができる、という予感と興奮を与えることに成功していると思います。

授業開講は4月10日でしたが、さっそく5月20日に発表会があります。「自分が作ったオリジナルなプログラムを大きなホールで披露する」…そういうプロトタイピング+プレゼンテーションという楽しい体験、すなわち発想したものを実際に具現化し、動かしながら伝えるプロセスを、基礎知識習得の前に味わわせようとしているわけです。

3.宮下先生は今後どのようなメディアが台頭してくるとお考えでしょうか?

「先端メディア」を名に冠した学科ですので、まさにそれこそが私たちの研究テーマです。この分野では、学会で発表されている研究成果と実社会での普及や認知に乖離があります。たとえば2次元マーカ上にCGを重畳表示する技術、すなわち現在AR(拡張現実感)技術と称されているものは、いまから16年前の1996年に学会発表されています。実際に技術が世に知られ、普及するのにそれだけ時間がかかるということです。

ですので、私たちの研究している技術が世に普及するのはそれくらい先であることをご理解いただいた上で紹介しますが、宮下研究室では、味を提示するメディアを開発している大学院生がいます。フォークやストローに電気を流して食品を介して舌に刺激を送るシステムですが、これによって、実際に調味料を添加しなくても味を加えることができます。最近は、塩味が薄い食品でも、さらに塩をかけることなくより強い塩味を感じさせることに成功し、その成果を学会発表しています。将来的には、塩分を取り過ぎてはいけない方々の助けとなりうると思いますし、味気ない薄味の病院食の味のバリエーションを広げるなど、健康・福祉といった面にも貢献できると考えています。

ご質問の意図が「数年後に流行するウェブサービス」というニュアンスに近いのであれば、コミュニケーションメディアにおいても近々大きなイノベーションが起こっていくのではないかと予想しています。というのも、「手紙」のメタファに基づいてデザインされたeメールによるやりとりにはそろそろ限界がきていると感じている人も多く、チャットワークやサイボウズLiveなども最適解ではないと実感されているからです。

コミュニケーションメディアにおける研究も、学会では多くの試行錯誤や実証実験がなされており、そういった知見の多くはオンラインで見ることができます。たとえばWISS というワークショップでは、これをテーマのひとつとして毎年活発な議論がなされています。オンラインでの議論に積極的に参加できないユーザの支援や、時間流の異なる複数のレーンによって情報が整理されるチャットなど、面白いだけでなく効果的な知見が多くあるので、そういったものが実社会のサービスとして受け入れられるといいなと思っています。

今回インタビューさせて頂いた明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科についてはこちらで詳細をご覧頂くことが可能です。

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